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「…私に用があるんですよね?」
二人はひんやりした薄暗い廊下に出た。まだ誰も通り過ぎない。
「確かめたいことがあったんだ」
誰もいない空き教室に入ると、薫は窓際でうつ向いた。仕方なく翠も後ろへ歩み寄る。
「俺は、この国の王の血を引いている」
「へ……!!?」
翠はぎょっとして薫の顔をまじまじと見た。
真剣なままの薫は、Yシャツの袖を捲り上げ、やや華奢な腕を見せた。その表皮には青白く焼けたような、妙な形の紋章が表れていた。
火傷の痕のようで翠は思わず息を飲んだ。しかし驚いたのはそれだけではない。
「これ、もしかして『ユニット』…!」
薫は力無く頷いた。
ユニットとは、レザードメア国において王の血を引く証である。その地位を将来継承させるべき者に刻まれるものとして存在する。
小学校の頃から教科書で何度も見てきたが、間違いない。
「『王の血を引く』とか『紋章』を隠すことは容易い」
そう言うと、薫の腕から『ユニット』の痕が静かに消えていった。
「問題は…どうしても力を隠せないことなんだ」
「…私にどうしろって言うんですか。ていうか、大体なんでそんな人がこんな辺境の街にいるの?」
薫は、翠の見透かされそうな瞳に少々たじろいだ。
「…ここのところ、起きているだろう?君の回りでも」
「え…?」
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