その始まり

6/8
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
  「…私に用があるんですよね?」 二人はひんやりした薄暗い廊下に出た。まだ誰も通り過ぎない。 「確かめたいことがあったんだ」 誰もいない空き教室に入ると、薫は窓際でうつ向いた。仕方なく翠も後ろへ歩み寄る。 「俺は、この国の王の血を引いている」 「へ……!!?」 翠はぎょっとして薫の顔をまじまじと見た。 真剣なままの薫は、Yシャツの袖を捲り上げ、やや華奢な腕を見せた。その表皮には青白く焼けたような、妙な形の紋章が表れていた。 火傷の痕のようで翠は思わず息を飲んだ。しかし驚いたのはそれだけではない。 「これ、もしかして『ユニット』…!」 薫は力無く頷いた。 ユニットとは、レザードメア国において王の血を引く証である。その地位を将来継承させるべき者に刻まれるものとして存在する。 小学校の頃から教科書で何度も見てきたが、間違いない。 「『王の血を引く』とか『紋章』を隠すことは容易い」 そう言うと、薫の腕から『ユニット』の痕が静かに消えていった。 「問題は…どうしても力を隠せないことなんだ」 「…私にどうしろって言うんですか。ていうか、大体なんでそんな人がこんな辺境の街にいるの?」 薫は、翠の見透かされそうな瞳に少々たじろいだ。 「…ここのところ、起きているだろう?君の回りでも」 「え…?」  
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!