その始まり

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  この世は長きに渡り、2つの大国よって支配されてきた。レザードメア国とメルル国である。 メルル国は魔法の精製やナノテクノロジーの開発を持って強力な軍事力を構築し、世界の支配を目論んだ。 第二の大国と呼ばれたレザードメア国はこれを抑止しようと立ち上がった。 そして戦争は始まったのである。 得るものは何も無かった。有るのは生か死か。戦争に関わらない国民は、巨大な権力の前にただ翻弄されながら、犠牲となっていった。 しかし、戦いが始まってニ十年、メルル国とレザードメア国の両軍共に戦力が尽き始めた頃。壊滅寸前に追い込まれたレザードメア軍は、奥の手として隠し持っていた破壊兵器によって、メルル国に逆転勝利した。 かくして戦争は事実上レザードメア国の勝利により、終わりを遂げた。 月が地球の回りを一周する時間を基にして定めた太陰暦で、八月十六に一時休戦が宣告されたため、のちに『十六夜戦役』と名付けられた。 だがレザードメア国の喜びも束の間、五年後にメルル国は完全な復興を遂げた。その人間の並を外れた非常識な復興力は、再び世界を恐怖に陥れたのである。 翠が生まれる前から、既に戦争は始まっていた。そして未だに終わる気配を見せない。 それは多くの若者に諦めを植え付けていったのである。  
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