‐突然すぎたプロローグ‐

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 まあ、オフ会とかならともかく、わざわざ九州から関東まで来て、リアルで会う必要はないのデスけど……そうしなければならない事情、というものもある訳で。 「困ったなぁ……早く『これ』渡したいんだけどな」  呟きつつ、小脇に抱えられた『これ』を見やる。  それは一言で表すなら抱き枕。しかしただの抱き枕に非ず。その両面にはデカデカとプリントされたとあるキャラクター。  ──『十六夜 咲夜』。  東方Projectというゲームの登場人物が描かれたそれこそが、幼女サンの欲してやまない物。  ……後になって思うと、これこそが今回の事件の元凶だったのかも知れマセンね。 「とにかく、此処からこう行けば大丈夫な筈……多分、恐らく、きっと、メイビー」 「パパー、あの人何やってるのー?」 「あれはな。若気の至りって言うんだよ」 「へー、あの人もなんだー」 「…………」  ……何で自分は見ず知らずの親子連れに、若気の至りなんて言われてるんデショウか。  そこでふと思い至る。 「そうだ。あの人に訊いてみよう」  訊くは一時の恥、訊かざるは一生の恥。  両手に地図と抱き枕という、冷静に己を省みれば結構怪しいスタイルで親子連れへと歩み寄りマシタ。 「あの、スミマセン。自分この場所に行きたいのデスが……」 「ん? 迷子かい少年?」 「まあ、恥ずかしながら……」 「若いねぇ……ここはこう行ってだな……」
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