~ プロローグ ~

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「確かにあまり待たせては良くないね」  そう男性は答えると、手にしているカードを机の隅におく。  他のカードを束ね懐にしまうと、最後の一枚を手に取り、しばらく見つめた後それも懐にしまった。 「待たせてしまったね」 「小言を言い合うのは後でいい。まずは試験を終わらせよう」  そう言った茶髪の男性に全員が頷き、順に手のひらを机の中心へと伏せていく。  するとそれぞれの手元が輝き始め、それは床の魔方陣へと広がっていく。  部屋を何色もの光が包み込み―――収まった時、部屋の中央には一人の少女が立っていた。  瞼を閉じて立つ少女の姿に、「……これは」と黒髪の男性に続いて「……なんと幼げな」と赤毛の男性も呟く。 「歳は……十歳くらいか?」 「もし受かれば最年少記録を更新かしら?」  そう話す女性は楽しそうに口許へと指を当て、白髪の老人は黙って少女を見つめている。  その手は光がおさまっているにも関わらず、眩しそうに額へと翳されていた。 「私語は慎むべきだ」  茶髪の男性の戒めに、その場はしんと静まり返る。 「では」と金髪の男性が立ち上がりこう続けた。 「問いましょう、貴女の名前は?」 「……私は―――」  答える少女の瞼がゆっくりと開き始めた。      
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