約束

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暫くして教室の前が騒がしくなった。 「柊さん、お早う」 「柊、今日放課後暇か?」 「撫子の君、何て美しいんだ」 褝が学校へ来たらしい。 彼女は、何も言わずに席に向かって歩いてくる。 顔色が悪く様子が変だ。 「…………」 「…………」 僅かな沈黙と高鳴った鼓動。 一瞬だけ褝と目が合った。 スッと褝は、俺の隣に立ち止まる。 「…る…ちゃん」 「?!!…」 褝がフラッと倒れてくる。 「おい!…褝っ。おい。」 とっさに褝を抱え立ち上がる。 「辻っ、柊さんをどうす」 「ごちゃごちゃうっせぇんだ…黙ってそこどけ!」 褝は凄い熱だった。 慌てて教室を出る。 「辻くん」 草野が俺を呼んだ。 「またな」 「ちょっと待っ」 俺は校舎を後にした。 二人分の荷物を単車にくくり、褝を前に座らせ家まで送った。 「きゃー。光くん、褝っ」 「佐和子さん、こいつ熱があるみたいだから」 「分かったわ。ごめんなさぃね。助かったわ。」 佐和子さんは、褝の母親だ。 「あの、良かったら褝を部屋まで運んでもらっていいかしら?」 「あ、はい。」 俺は佐和子さんと褝の部屋に上がった。
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