約束

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俺…何やってんだろ。 「ほら、被れ」 「きゃっ」 褝にヘルメットを被せる。 単車に跨がり、褝を後ろに乗せエンジンをかけた。 「辻くん、どこに行」 「さぁ」 家を出る。 暫く走って、海へ着いた。 「ぅわっ綺麗」 褝が笑った。 「だな…」 俺は褝が笑うのを見ながら座った。 「辻くん」 ニコニコしながら褝は俺の隣に座る。 「やめろよ」 「え?」 「他人行儀な呼び方はやめろ」 「?」 「倒れる前に呼んだだろ?」 「……ぁ、の…ぇと」 「光だ」 俺は笑った。 褝も笑う。 「私ね、家で寝てる時光くんの夢見てたの…昔の約束の夢」 「……!!」 (忘れてなかったのか?) 「忘れてるかも知れないけど…」 「…………」 (忘れるわけねぇだろ) 褝は海を眺める。 「中学から段々光くんは、大人になってくし相手にされなくなるんだろうなって思ってたの…」 声が涙ぐむ。 「高校入っても頭から離れなくて、ぼーってしてきて光くんの隣に立ってて、気が付いたら家で光くんが居て……っ……ぅ」 褝は泣き出した。 「なわけねぇだろ…」 俺は褝の頭をポンポンと撫でた。 「褝の方が俺を避けてんのかと思った」 「?そんなっ」 「俺、阿修羅らしいからさ」 褝は、びっくりした顔をしたがすぐに笑った。 「光くんは、光くんだよ。」 無償に嬉しかった。
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