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「…そうですね。本当に時間が経つのは早いです。
お父様が一年前のあの日に、戦争孤児である私を拾って下さらなかったら今頃どうなっていたか…。」
娘が憂鬱そうに言うと、男は娘を安心させるように笑いながら言った。
「大丈夫だ。もうお前は私の娘になったのだから路頭に迷うようなことにはならないさ。」
「…ありがとうございます、お父様。」
「さて、今日は疲れただろう。後片付けは私がやっておくから、もう寝なさい。」
男がそう告げると、娘は軽く頭を下げた。
「はい。お休みなさい、お父様。」
「あぁ、お休み。」
―パタン。
娘が自室に戻ったのを見て、男は溜め息混じりに呟いた。
「もうあれから一年か…。時が経つのは本当に早いな。」
男はテーブルから立ち上がり、二人分の食器を片付け始めた。
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