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「ん?何か言ったか?」
小さな声を聞き取れなかった男が問い掛けると、娘はゆっくりと顔を上げた。
「ねぇ、お父様。覚えていますか?」
「何をだ?」
「私の顔。」
「何の事だ?」
娘の不可解な言動に、男が戸惑いながら問い掛けると娘はうっすらと笑いながら言った。
「私の顔に見覚えはありませんか?」
「あるに決まっているだろう。家族なのだから。」
「…私の顔を一年間見続けても何も思い出しませんか?」
「…思い出す?何を…?」
「…覚えてもいない。」
「おい、さっきから何が言いたいんだ?」
先程から訳の分からない娘の言動に、男は僅かに眉間に皺を寄せた。
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