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~ プロローグ ~
月が荒野を蒼く照らしている。
辺りには街も村もなく、人影一つとして見当たらない。
唯一線路が走っているが、今は列車が通る時間ではないらしい。
荒野はひっそりと静まり返り、どこからか虫の音だけが微かに聞こえている。
…ビキッ…ピシッ…バキッ…
突然、静寂を打ち破る様に亀裂音が鳴り響いた。
地鳴りと共に地面が、そして線路が崩れ落ちていく…
再び静けさを取り戻した時には、荒野には巨大な穴がぽっかりとあいていた。
…真っ暗な穴の奥深く、何かが蠢いている。
…ズ…ズ…ズズ…
引きずる様な音とともに、穴から一匹の蛇が姿を現した。続く様に数匹の蛇が穴から這い出してくる。
そして…
…ズズ…ズ…ズル…
まるで引き上げられるかの様に、一本の胴体が穴から這い上がってきた。
這い出してきた数匹の蛇達は、一本の胴体で繋がっていた。
蛇の身体が蒼い月明りに照らされ、荒れ地に蒼白く浮かび上がる。
…シュル…シュー…
微かな…何処か哀しげな蛇の声が静寂に溶けていく。
蛇達は何か思う様に夜空を見上げていた。黄緑色の瞳には蒼く輝く月が映っている。そして…
次の瞬間、蒼く照らされた荒野に蛇の姿はなく、一つの人影が佇んでいた。
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