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―――…
――…
―…
「お帰りなさいませ、るい様」
「…ただいま」
帰ってくる度にメイド達が一斉に並び、自分に挨拶をするのはいつものことだが………。
毎日毎日……よくこんなことやるよなぁー。
溜め息をつき、二階にある自分の部屋へと向かう。
「志紀、まだ起きてるかなぁ」
起きていたら遊びにいくつもりである。
最愛の人とは家が隣同士。
彼は意地っ張りでかなり強気な性格。
でも、そんな所も好きなんだよなぁ………。
自然と笑みがこぼれながら、ドアノブをまわす。
――――その時だった。
「……るい!やっと帰ってきたのね……。心配したのよ?」
突然、母の芹沢美沙子(せりざわみさこ)に声をかけられ、驚く。
「あっ、お母さん…」
いつも心配してくれている優しくて明るい人柄。
たくさんの人から人気がある自慢のお母さん。
………けどあたしは……。
るいは俯き、申し訳なさそうな顔をする。
「今日もお友達と遊んでたの?…せめてもうちょっと早く……」
「……ごめん!あたし、もう寝るから!!」
「ちょっ……るい――…!」
――――バタン!
るいは自分の部屋に入り、大きな音をたててドアを閉めた。
「………っ」
最低だ……自分…。
毎度毎度思うことだった。
あんなに心配してくれているのに、自分は嘘をついている。
罪悪感でいっぱいだが、今はやめることができない。
寂しいのだ。
寂しくて、温もりがほしくて……
誰だって、最中なら抱きしめてくれた。
そんな些細なことが今のあたしを救ってくれている。
不自由のない生活……
かといって、幸せであったわけではない。
この家はあたしにとって地獄だった。
小さい頃、あたしはこの家でよく泣いていた。
辛かった。
苦しくて……
普通じゃない完璧なあたしを、彼はつくろうとしていた。
でも、これはあたしの人生。
好き放題勝手にやらせてもらう。
逆らって、満足を得る。
ただの自己満足。
せめてあいつが帰ってくるまでは───…!
「…あっ」
ふと、窓のほうへ目を向けた。
志紀の部屋、明かりがついてる……。
「志紀…まだ起きてるんだ」
この時間帯になると寝てることが多い志紀が起きていることに少しびっくりする。
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