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――――…
―――…
「もうすぐ卒業かぁ…」
家をでて学校までの道のりを歩いている時だった。
るいは溜め息をつきながら言う。
「…まだ10月だから、あと5ヵ月はあるぜ?」
いや…その前に、俺達まだ高一だし…。
うっかりるいに流されるところだった…。
志紀は俯き、引きつり笑いを浮かべる。
突然のるいの言葉によく流されることがある。
気をつけなきゃな……。
「…それにしても、志紀のお母さんったら…『こんなかわいい子が将来私の娘になるなんて、楽しみだわぁ~』なーんて…大胆なこと言っちゃって…。恥ずかしっ!」
るいは顔を赤くさせ、笑って両手をほっぺたにあてる。
「それに対して、『任せてください!私が必ず幸せにしてみせます!』…って母さんに抱きついたお前もお前だけどな…。恥ずかしっ…」
朝から二人で騒がしかったことを思い出す。
志紀は苦笑いでるいに返す。
「なによー。ノりにノる事は大切だよ?志紀くん…♪」
るいは意地の悪い笑みを浮かべる。
「お前のノりはいきすぎてるんだよ。」
あきれて返してしまうのは何回もあるからだ。
そろそろこういうことを言うのも疲れてきた。
「…ひどっ。志紀のお父さんだって…………あっ、もうすぐ命日だよね?近いうちに、お墓参りに行きたいんだけど…いいかな?」
…あっ、そういえばそうだ。
るいは思いだしたように言う。
「…あぁ、うん」
「そっ、ありがとう」
るいは優しく志紀に微笑むと前を向いた。
それにつられ、志紀も前を向いて歩く。
もうあれから10年がたとうとしている。
年がたつのは本当に早いと実感する。
確か、父さんとるいがよく漫才を組んで、俺を笑かそうとしてたな…。
懐かしい思いでに自然と笑みを零しながら、チラッとるいの方を見る。
それに気付いたのか、るいが口を開く。
「……志紀さぁ、けっこう冬服似合ってるじゃん。やっぱ男子のブレザーっていいよね」
「えっ?あぁ…どうも。」
突然のるいの発言に少し戸惑いながら返す。
「……襲いがいがあって」
「…………そういうことか。真剣な顔して言うんじゃねーよ。最低」
ボソッと呟いたるいに対し、志紀は鋭く返す。
そんなことを言いあっているうちに学校へと着いたのだった。
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