True‐start‐

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「おはよー志紀」 「あぁ、おはよう」 教室に着き、一番に自分に声をかけてきたのは大原凌(おおはらしのぐ)だった。 彼は一番の親友であり、信頼できる奴だ。 凌はるいと志紀を交互に見て、溜め息をついた。 「はぁー…それにしても、また美人な彼女と登校ですか」 「…はっ?美人な彼女って、るいのことか?」 志紀は眉をつりあげて凌に問う。 「…それ以外に誰がおるんだよ…」 当たり前だろとでも言うように溜め息をつく。 ただの幼馴染みなのにそう言われると、あまりいい気分ではない。 「はぁ……………あいつはただの幼馴染みだよ」 そう言うと、志紀は自分の鞄の中を整理する。 …確かに、学校には当たり前のように一緒に行っている。 たまに度がすぎるが、あいつの俺に対する言動とかだって、ただの遊びみたいなものだ。 …そう考えると慣れって恐いな…。 志紀は俯き、苦笑いを浮かべる。 「……まだ杏里ちゃんのこと忘れられないのか?」 ―――――ドキッ 志紀は鞄の中を整理していた手を止め、凌を見る。 「………なっ…なんだよ、急に…」 「…………そうなんだな。お前、動揺しすぎ…」 凌は志紀の肩に手をやさしく置く。 「…べ、別に…杏里のことはもう…」 なぜ急に杏里の話になるんだろうか。 志紀は動揺をみせながら、止めていた手を再び動かす。 「あいつ、志紀に何も言わずに転校して…しかも今、音信不通なんだろ?そんな奴を想っていたって…」 「わかってる。…わかってるけど…」 だけど…。 志紀は悲しそうな表情を浮かべ、俯く。 …本気で好きになったものを、簡単に嫌いになることなんてできない――…。 そんなことができれば、こんな苦しい思いなんてしない。 志紀から暗いオーラがでる。 「………ごっ…ごめん、こんな話もちかけて…」 そんな志紀の様子をみて、申し訳なさそうに謝る凌。 「凌は何も悪くねーよ。俺も…なんか、まだ気持ちがフラフラしてて…」 多分まだ…杏里のことは好き。 だから忘れようと思っていてもやっぱりダメで…。 安定しない気持ちが……―。 「…………」 志紀は何も言えず黙り込む。 「……じゃあ、先生くるから後でな」 そういい、凌は自分の席へと戻っていった。 志紀は凌が戻っていったあと、自分のイスに座り先生が来るのを待っていたのだった。
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