True‐start‐

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─るいSIDE─ ───…光り輝く建物 大人の世界、夜の街…… きっと、高校生の自分がここにいることは許されないのだろう。 こんなことがばれたら、きっと退学だ…… そんなことを考え、自嘲気味に笑うと煙草に火をつけた。 あるホテルの一室。 窓を通して見えるのは光り輝く建物。 外の世界はこんなにきれいなのに、 どうして自分はこんなに汚れているのだろうか。 「はぁー……」 まぁ、そんなこと考えても仕方ない。 自分は自分。 こんな性格になってしまったのも仕方のないこと…… 「……るいちゃん、ここに置いておくから」 そう男が言って、机に置いたのは万札が三枚。 男は笑顔だった。 「……あら、もうシャワー浴び終わったのね」 あたしは彼のスーツ姿を見てそう言い放った。 さっきまでシャワーの音がしていたのだ。 「今日は早く帰らないといけないからね。じゃあ、また今度……」 「はい、さよーなら」 ドアを開け、立ち去る彼にあたしは最高の笑顔でそう言った。 「また今度…ねぇ…?」 男がいなくなった、シーンとした室内で一人そう呟いた。 そう言われて、また会ったことなんてあっただろうか。 用が済めば、もう終わり。 実際、自分を大切に思ってくれる人なんていない。 別にいい。 どうでもいい。 あたしにそんな人は必要ない。 ただ残るのは少しの後悔と押し寄せる喪失感。 でももう何度も繰り返してきたこと。 表には絶対ださない。 今さらやめようとも思わない。 そう、今となっては笑ってしまう自分がいた。 灰皿に煙草を押し付け、乱れた自分の服装を直した。 そして万札を乱暴に握りしめてかばんを持ち、部屋をでた。
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