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「………あっ、そういえば一時間前、美沙子さん来た…」
「……え?」
「…るいがどこにいるか知ってるかって…訪ねてきた…」
お母さんったら…志紀の所まで聞きにきたのか。
自分がお母さんにに心配をかけすぎていることは自覚している。
………しかし、志紀にまで聞きにきていたとは思わなかった。
あたしは悲しそうに笑った。
「志紀は…お母さんになんて言っておいた?」
聞きにくそうに志紀に問う。
「…知らない、って言っておいた」
志紀も言いにくそうに返す。
「……だから…もうやめろよ。美沙子さんに…もう心配かけさせんなよ…」
「…………」
志紀は悲しそうにあたしに伝える。
「だいたい…金持ちのくせして…なんでそんなことまでして金が必要なんだよ…」
苦しそうに言う志紀をみて、胸が痛んだ。
ごめんね、
目的はお金じゃないんだよ?
それにね、周りの人に迷惑をかけてまで、やってはいけないことをやっている。
そんなことはわかってる。
そして、あたしはまた嘘をつく。
あたしは志紀の言葉に笑顔で口を開いた。
「…お父さんの稼いだ金なんていらない。だからするの」
「……」
「…金さえ手に入れば何でもする。家族のことなんて何も考えてない。…あんなお父さんのお金なんて…だから自分で遊ぶお金くらい自分で稼がなきゃいけない」
嘘の動機。
でも思っていることには変わりはない。
父は外国に仕事で行っていて、日本に長く帰ってきてない。
それがせめてもの救いだと自分は思っている。
「…………」
志紀は気まずそうにるいの言葉を聞いていた。
「……まっ、そんなところ。じゃ、あたし帰るから。疲れたし…、報告ありがとう」
「…うん」
るいはにっこり笑うと、立ち上がり、自分の部屋に戻るためベランダにでる。
ガラッ――…
「……一つだけ忠告しておく。」
あたしは柵に手をかけながら呟いた。
「………?」
志紀は意味が分からず首を傾げる。
「……あたしの心配より、自分の成績の心配したら?そこのノートに挟んである、ばってんだらけの答案用紙」
「は!?なっ…いつの間に…」
慌てる志紀に、あたしは怪しい笑みを浮かべ、自分の部屋に戻っていった。
「たく…いつ見たんだよ……」
志紀は顔を赤くしながらも、いつもと変わらないるいであったことに安堵のため息を漏らした。
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