生命あるものからの宣告

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そして、父親の肝臓ガンが発見されました。 『非常に遅すぎました。ガン細胞はほかの内臓まで転移しておりまして、少なくとも可能性はもう………。』     『猫の…祟り…猫の祟りだわ。』 『何言ってるの、裕美ちゃん。』 『あたしとお兄ちゃんが猫を殺したから…』 『バカみたいなこと言ってるんじゃないのよ。祟りなんてね、そんなの迷信よ。』     1年もたたないうちに父親も他界しました。   裕美に対するいじめは、ますますエスカレートしていきました。 殴られ、蹴られ 『裕美、近寄るなよ!』 『おまえは呪われてるんだ!』 『呪われた家の子だ!』     ある日納屋を母親が開けると… 『いやああああ!』 裕美は首を吊って死んでいました。     『裕美ちゃんに対するいじめが、そうとうひどかったみたいだよ。』 『ずぅーっとアザをつくって帰ってたっていうからねぇ。』 『こんなことたてつづけに続くなんて、この家はやっぱり呪われてるよ。』 近所でも、そう囁かれていました。     それから二年後。   この家に最後に残された母親も子宮ガンで倒れたのでした。 痛みを訴えるその悲痛な泣き声は、そののち看護師さんたちみんなが、口をそろえて言った言葉は 『まるで、猫が首を締められて鳴いているような声でしたわ』 とのことでした。   そして奇妙なことにその姿は、痩せ細りお腹だけがふくらんでいるという、まるで餓鬼そのもののようになっていたといいます。   あの出来事からわずか5年もたたないうちに、一家が全員悲痛な死を遂げたのです。     単なる偶然が重なっただけでしょうか。 いいえ、私にはとてもそれだけだとは思えません。   これは、生命あるものからの宣告だったのです……
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