598人が本棚に入れています
本棚に追加
人間ってのは、まずオッカアの身体の中で外見を造るわけだよな。
でもそんときに、何か根っこのところも同時に造ってるんじゃないかって気がするよ。
そういう心の奥の根っこの太いやつは、何をやってもうまくいく。
でもね、その根っこの細いやつは可哀想だ。
ガタイはよくても、そよ風程度のことでグラグラしちゃう。
まあ、この業界でノシていくやつの根っこは太そうだ。
それに比べりゃ、チョロのは根っこが腐っていた。
チョロは殴られた。
蹴られた。
それでもヘラヘラ笑い続けていた。
何をやっても笑ってやがるから、しまいにはそれが仕事みたいになってたんじゃないかな。
灰皿で頭を割られ、便器を舐めさせられても、しばらくたつと薄笑いがチョロの顔に戻っていた。
今から考えれば、あいつは『自分をわらっていた』んだな。
ある時、チョロは兄貴分に呼び出されそのまま1週間姿を見せなかった。
チョロは兄貴分にいわれるままに、彫師の前に寝ると一気に墨を入れられた。
翌週、少々青ざめた顔のチョロが組に戻ってきた。
『おい、俺をバカにすんなって背中に気合い入れたんだって、見せてやれ。』
『へい。』
最初のコメントを投稿しよう!