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チョロの体は筋ばり、触れた肌は海老のようにざらついた。
欠食児童みたいな体だったね。あちこちシミの浮いた生気のない皮膚と、腹だけが妊婦みたいに突き出していて。
背中には細い房が生えていた。肉腫だ。
それを見て全員が息を飲んだのは、揃いもそろって彫られた墓の土にあたる部分から生えていたからだ。
指だよね……
どう見ても、まわりの肉も盛り上がっている分、裂けるからね。よけいにそう見える。
注射跡のないチョロは五万円ほど与えられるとお払い箱になった。
医者にいけよってつもりだったんだけど、結局は飲んじまったか、スッちまったか…………
それから姿を見せなくなった。
1ヶ月後
兄貴分が、
『自宅のマンションにヤツが来てよ、故郷に帰るといってたな。ずいぶん痩せて誰だかわかんなかった。どっかのじいさんが部屋間違えたのかと思ったな。あれはひどいな。治ってないぜ』
背中の様子は荷物を担いでいたので不明だが……
彼は故郷の名物だからと、煮こごりのようなものを置いていった。
ちょうど酒のつまみを切らしていた兄貴分はそれを受け取った。
『タラコかな。魚の卵。プチプチしてたな。』
チョロはそのまま行方をくらまし、噂にも出なくなった。
それであるとき、刑事がやって来たんだ。
普通思われているよりも刑事とヤクザの付き合いは多い。
付き合いっていっても、世間でいうような飲み食いじゃないよ。
会って話をする。
俺たちにできるのはその程度だ。
たまに金券やビール券を流すことはあるけど……
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