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刑事はチョロのことを告げに来たのだ。
死んだっていうことだった。安アパートでひとり死んだ。
医者にかかっていたわけじゃないから、一応、不審死体として検死されたらしい。
妙な匂いがしたため、チョロの部屋は開けられた。
管理人と一緒に入った警官は、横にだれかが倒れていると錯覚したそうだ。
あいつの背中の腫瘍が大きく膨らんでてな、もうひとりいるみたいに見えたんだと。
死んだのは背中に彫ってある日付だった。
検死に回された理由は腫瘍の抜け方にあった。
体腔を突き抜けるように出ていたからな。
自然とは思えなかったそうだ。
しかし、周囲にチョロ以外の人間がいた形跡もなく、最終的には事件性なしということで処理された。
因果なものをしょってるからだ、と、そのあとももっぱら噂になったらしい。
チョロに刺青を背負わせた兄貴分も、それから数ヶ月して死んだ。
大腸ガンだった。
アネさんに聞くとチョロのヤツ、組を離れても兄貴のところにはちょくちょく『タラコ』をおくっていたらしい。
アネさんは
『私は生臭くてダメだったけどね………。あの人は妙に気に入ったみたいで酒のあてにしてたわ。』
思えばあれがチョロの最初で最後の反発だったんだろう。
チョロが兄貴に喰わせていたのは、きっと背中の腫瘍をなますにしたものだったんだ…………
翌年、佐藤さんは足を洗った。
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