君の恋に心が揺れて

遠い人

ピンポー…ン。

薄く汚れた色のコウの部屋のインターホンを押すが、出てくるのに時間がかかる。

今日もちゃんと来ることは先に伝えていたのに、待っていてもくれないのかと少し落胆していると、ガチャっとドアが開く。

「あぁ」
なんだ、お前かという無関心な出迎え。

「コウ、夕飯まだでしょ？私材料買ってきたから今日は作ってもいい？」

スーパーの袋をガサッと見せ付けながら靴を脱いで上がる。

「おぅ、さんきゅー」

一応お礼を言われたので気分は良くなる。
こんなご機嫌取りで自分の気分も盛り上げる。こうやって修正していけばいい。

そんな決意で臨んだ矢先、

「なに？このにおい」

無視出来ないくらいのワンルームの部屋に広がる甘ったるい香りに反応する。