20人が本棚に入れています
本棚に追加
二人のやりとりにレイが引きつった笑い声を上げる。
「心配は有り難いが大丈夫だよ・・・ただ疲れてるだけだ」
「・・・目が死んでるぞ」
さすがにミラやアランも心配げな視線を送ってくる。
「ホント大丈夫。心配ご無用だよ」
生気のない声でそれだけ言うと、彼の定位置である最前列へと降りていく。
「リアンは何か聞いてないのか?」
カルが雀斑だらけの顔に不安の色を浮かべて聞く。
「さあね」
問いかけられた幼なじみは軽く肩をすくめただけで、レイの後を追った。
「毎度のことながら思うんだがな」
「ん?」
「何でお前は毎回当然のごとく俺の隣に座るんだ」
思いっきりあからさまに不快感を露わにした表情でリアンに尋ねる。
「いいじゃない迷惑はかけてないし」
「・・・一昨日医療術科の時間に俺の頸動脈をすっぱりいきかけたばかりだが?」
「そんなこともあったわねぇ」
わずか六十と数時間前のことに遠い目をするリアン。
レイは頭を抱える。そもそもこの一ヶ月で彼女から迷惑を被らずにすんだ授業を探すのが至難の業に近い。二週間前は羽ペンが灰にされたし、入学直後の歴史学の時間にはローブにインクをこぼされたりと大なりのトラブルを受けている。
「ところでさ」
リアンが話題を変えてくる。まだ言いたいことは山のようにあるのだが。
「あんた、まだ引きずってるの?」
一瞬間、沈黙。
「・・・何の話だ?」
ようやく絞り出せたのは、自分でもいらつくぐらい陳腐な返し方だった。
最初のコメントを投稿しよう!