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朝六時に起き、顔を洗い、バランスのよい朝食を食べ、歯を磨く。
至ってふつうであり、極めて健康的で理想的な生活には違いないが、これを常に守り続けることは至難の業である。特に朝寝坊を極上の快楽と位置づける学生たちにとっては断食よりもつらいことのはずだ。
そういうわけだから、ラーム総合魔法学校に入学してから一ヶ月たつのに未だにこの生活を保っている少年は、校内では変わり者として通ってしまっている。
少年の容姿は端麗といっていい。長身で、目元は涼やかで顔のパーツのバランスもとれている。歳の頃は14、5程度なのだが、雰囲気は落ち着いていてそれより年長者に思わせる。身に纏う白のローブもそれを助長するだろう。
(そろそろ行くか・・・)
首から下がった懐中時計に目をやる。ちゃんと部屋には時計があるのだが、彼は習慣として自分の懐中時計の方をみるのである。
肩まで伸ばした癖のない黒髪を頭の後ろで縛る。道具や書物を鞄に放り込み、それを小脇に抱えて部屋を出る。
ラーム総合魔法学校に通う少年-レイ=ソーラの一日は、常にこの形で始まる。
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