基礎魔法学と抜き打ち実技試験

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ラーム魔法学校は、広い。小さな町が1つばかりすっぽりと入ってしまうほど広大な敷地の真ん中に、とびきり裕福な家が全財産をつぎ込んで作ったような豪華で絢爛で壮麗な城が建っている。ついでに言うと見かけ倒しではなく中身もかなり充実した設備だ。 ちなみにレイが寝起きしているのは校舎のすぐ南に位置する第一生徒寮だ。大きさとしては比べるべくもないが、魔法士四百人を収容するだけあって大きい。 巨人が二人並んで通れそうなゲートをくぐり校内に入る。この時間帯はまだ人影はまばらで、一時限目の授業が北棟三階の教室に行くまでの間にすれ違った生徒は二~三人の上級生でしかない。 ましてや朝早くからあらかじめ受講する授業が行われる教室に行って予習をするような奇特な生徒など全校を探してもレイぐらいしか見あたらないのだが、意外なことに今日は先客がいた。それも三人。最後列の机を一つ占領して真剣な表情で話し込んでいる。 「珍しいな・・・」 小さくつぶやく。入学して以来初めて見る光景だ。 近づいてメンバーの顔を見てさらに驚く。 (リアン?) 中央に座っていたのは校内でも勉強嫌いで通る幼なじみの少女、リアン=イエーガーだった。年がら年中騒がしくて「悩み」という単語ともっとも縁遠い彼女が、イヤに真剣な顔で(何故か)机の上に置かれた目覚まし時計と向き合っている。 (・・・何してんだ?) 状況がつかめず、「おい」と声をかけようとして、 次の瞬間、ボン!と派手な音を立てて、時計が爆発四散した。
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