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「・・・ミラのを使ってた?」
レイの頬を冷たい汗が伝う。他人の魔器や魔玉を使うのは理論上不可能ではないが、実行するには極めて高い技術が必要のはずだ。少なくとも魔器形成も覚束ないリアンがそれをやるのは・・・
すると、リアンが再び胸を張る。
「あたしの天の邪鬼ぶりをなめないでほしいものね」
自慢げに言わないでほしい。
それから一時間を三人はリアンに魔器形成を教えるのに費やした。ちなみに何とかかんとかリアンが自分の手鏡を魔器にするまでに犠牲になったのは羽ペン二本(ミラ)にインク壷一つ(レイ)、あと高価な腕時計が一個(アラン)である。
「一時限目前からそれで大丈夫か?」
所々にインクの染みをつけてぐったりと机に突っ伏す三人をクラスメートのカル=ライアンが労る。このころになると教室もだいぶ生徒たちが入り始め、大理石の廊下にも生徒の声が充満している。
「三時限目には総魔学(総合魔術学の略)だぜ?体力温存しとけよ」
ラス=ロードも続ける。この二人は養成所時代からの名コンビとして知られている。
しかしミラとアランの表情は冴えない。
「そうか・・・総魔学あんのか・・・」
「・・・ギブ」
どうやらリアンの教育は彼らから根こそぎ体力を奪ったらしい。ローブの袖口につく焦げ跡がその苦労を物語る。
「二人とも元気だしなさいよ!これくらいのことでだらしないなー」
これで原因を作った張本人がピンピンしているのだから腹が立つ。
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