4月

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この学校は本館と北館があって課や学年によって館と階が変わる仕組みで、俺達の新しい教室は南館の3階の階段を上がってすぐ左手にある。 階段を曲がり廊下に出ると教室の前に見知った顔達が壁に寄り掛かっていた。 「お!おはよ翔平、悠樹。」 ひとりが気付くと、他も気付いて同じような挨拶をかけてくる。 「おはよ、みんな。」 俺達も適当に挨拶を交わしながらその輪の中に入った。 また今年も1年一緒だな!なんて、さっき階段で悠樹と喋った内容が繰り返される。話に耳を傾けながら俺は何気なく窓の外に目をやった。 北館の反対側には別館に進む道を挟んで本館が建っていて、この窓からは本館の教室の風景が見れる。 俺達も去年はあっち側だったなぁ。そんなことを思っていると、本館にも同じ様に教室の窓から外を見ている子がいた。 他の教室の奴等は友達と話に華を咲かせていたりと友達を作っているのに、あの子だけはただボーッと外を眺めている。 なにを見ているんだろう。彼女が見つめている視線を追いかけると、一本の桜の木があった。 もう満開じゃない桜は少し緑掛かっていて、あまり綺麗とは言えない。けれど彼女はにこやかにその桜を見ていた。 .
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