4月

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そして彼女は携帯を取り出して、それで桜の木を撮っていた。 そして彼女はとても嬉しそうに画面を眺め、柔らかく笑ったんだ。 その嬉しそうな顔に俺は目を奪われた。 一瞬周りの音が消え、周りを取り巻いていた空気が止まった気がした。 「おーい翔平?」 「へ?あ、なんだっけ?」 そこで俺は田口に話しかけられ、視線を廊下に戻した。 この時、俺にはどうして彼女があんなに嬉しそうにしていたのかが分からなくて、少し気になっていた。 だけどその答えはすぐにやってきた。 俺達は始業式のため南館と本館を結ぶ渡り廊下を歩いていた。 「うおっ!すげぇ!」 あと少しで本館という時に、いきなり田口が窓にへばり付いて叫んだ。 「うるせぇな。何がすごいんだよ?」 そう言いながら悠樹が同じ様に窓を覗くと、おぉ、すげぇ。と言った。 俺も気になって、その横から覗くとそこにはさっきの桜の木があった。 「…すげぇ。」 その時、彼女が笑顔だった訳がようやくわかった気がした。 「あんま陽が当たんなかったからだろうな。」そう悠樹が呟く。 そう、彼女が見ていた桜は俺が見ていた緑掛かった桜ではなく、とても綺麗な満開な桜だったのだ。 だけど謎が解けた筈なのに、まだ俺は自分の中に蟠りが残っている気がした。 そのことに少し首を捻りながらも体育館へ歩を進めた。 .
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