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先輩はボールを数回ついたあと、ゆっくりと息を吐きゴールを見つめる。
ただこれだけの動作だけでも、先輩のピリピリと集中した様子が伺えた。
そしてゆっくりとした柔らかなモーションで、ボールが先輩の手から放たれてゆく。
―ザシュッ。
綺麗な回転が掛かりながら、吸い込まれる様に入ったシュート。
だけど、俺が驚いたのはその後だった。
ボン…ボン…ボン。
そのまま床に落ちたボールが、数回バウンドをしながらまた先輩の手元に戻ったのだ。
前に端山先輩に聞いた事がある。シュートが上手い人は、回転が綺麗に掛かっている人なんだって。
だからそういう人はシュートを打った後にボールが戻ってくるんだと。
試しに回転を意識しながら打ってみたが、ボールは戻ってはこなかった。
その時に一朝一夕で出来るもんじゃない、って端山先輩に言われたのを思い出す。
「よしっ!」
手元に戻ってきたボールを満足そうに見つめる彼女の表情からまた目を離すことが出来なかった。
今日見た彼女の笑顔にどれも同じ物はなくて、どれも全部引き込まれる様に目が離せなかった。
もっと…もっと彼女の色々な表情を見てみたい。そう思ったんだ。
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