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懸命に走るイヤードの背中に、重い足音が追いすがってきていた。
それはまだほんの少し遠いが、なんの気休めにもならない。
膨れ上がる恐怖に急かされて、もつれそうな足を無理矢理動かし、萎縮する心を叱咤して、イヤードは逃げていた。
追っ手の方を振り返る余裕は無い。今はただ、無様に逃げることしかできないのだ。
ふいに、背中の向こうで殺気が恐ろしい勢いでわき上がった。動物的な勘に従い、イヤードは躊躇うことなく身体を横に投げ出し、岩陰に転がり込んだ。
そしてその刹那、地鳴りのような轟音と共に、すぐそばの地面が粉微塵になった。
猛烈な勢いで巻き上げられた土煙が、イヤードの視界を奪い、容赦なく目や喉に入り込む。
焼けつくようないがらっぽさに、涙と咳が止まらない。
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