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見る者を圧倒する巨躯。そこにはもはや、威圧的な神々しささえも感じられる。
だが、その神々しさは邪神のそれだ。イヤードにとってその象徴の最たるものが、それの腕に取り付けられた不気味な鉄の塊だった。
鋼を穿ち、地を引き裂く――そんな表現がお似合いの、馬鹿げた威力の機関砲。
それが――こちらを向いた。
猛々しい唸りと共に砲身が回転する。咄嗟に飛びのいたイヤードの鼻先で、身を隠していた岩がばらばらに砕け散った。
額に鈍く熱い痛み。
岩の破片が当たったのかもしれないが、確かめている時間は無い。
身を翻して脱兎のように駆け出したイヤードだが、後ろから迫る足音という恐怖に、内臓は極限まで縮みあがっている。今にも心臓が口から弾き出されそうなほどだ。
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