哀れむように蔑むように

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活路を切り開くには、地の利を活かして逃げおおせるしかない。 言うは易く行うは難いこの戦法を、イヤードは忠実に実行しようとしていた。 高々とそびえ立つ赤茶けた巨岩の陰に回り込む。そこから先は、体が覚えていた。 切り立った岩の側面に、ほんの申し訳程度に開いた洞穴――というよりは亀裂。 よほど注意していなければ見落としてしまうだろうし、仮に見落とさなかったとしても、人間が入れるようには見えないだろう。 そこに、無理矢理体をねじ込む。ぞっとするような圧迫感が、四方八方から襲いかかるが、敵に追われる恐怖に比べれば、無いも同然だった。 体を横向きにして狭い闇の中を横ばいに進むと、ふいに圧迫感が消え、体に自由が訪れた。 振り返ってみると、外の夕陽の赤に染められた世界が、細い亀裂の形に切り取られて、闇の中に浮かんでいた。 そしてその亀裂の中を、巨大な追っ手の足が横切った。不整地にも対応した、頑丈極まりない足だ。 一瞬背筋に冷たいものが走ったが、何事もなく通り過ぎ、ほっと胸を撫で下ろす。 心なしか、イヤードは自分の口元が緩んだように感じた。
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