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状況はまだまだ予断を許さないが、しばらくはここから出るわけにいかない。
入口の狭さとは裏腹に、この洞穴の奥は大の字になって寝転がれるほど広い。
へたり込んで壁に寄りかかると、押し込められていた疲労が嵐のように襲いかかった。立ち上がる事がこの上なく面倒なことに思える。
イヤードは背負っていた銃を膝に置き、異常は無いか確かめようとして――舌打ちした。
微かに差し込む頼りない外の光でもはっきりと分かるほど、無残に銃身がへし曲がっていた。
何が原因かは分からない――というより、心当たりが多すぎて絞り込めないが、これではもう使えない。丈夫で扱いやすいなのが取り柄だったが、こうなってしまえば、ただのがらくたに過ぎない。
傍らに用をなさなくなった銃を置くと、棘が刺さったように胸が痛んだ。
この銃との付き合いも、決して短くはない。
今ではよく思い出せないほど遠い昔のように感じるが、強い存在に憧れて、武装組織へと加わったのが数年前のこと。
神のために勇敢に戦う戦士たちは、幼い少年たちにとってはまさに英雄だった。
その時に渡されたのが、この銃だった。大人はこの銃がロシア製だと言っていたが、イヤードには「ロシア」とは何の事かぴんとこなかった。
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