ハジマリ

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「今日からこのクラスに転校生が来るぞー」 赤坂先生の声に僕は我に返った。 そろそろ僕の出番だろうか、とりあえずカッターシャツの一番上のボタンを止めておこう。 「えー、じゃあ入ってー」 教室のドアがガラっと開いた。 赤坂先生に招かれて僕は教室に入る。 教室中の生徒から視線を感じる。 教壇に立たされた僕を食いつくように見ている。 「んじゃ、自己紹介をしてもらおうか。はい、どうぞ」 …もう少し丁寧に促してくれよ。 軽く深呼吸して教室中を見渡す。そして… 「北条宏樹です。よろしくお願いします」 軽くお辞儀をすると拍手が巻き起こった。 「まだ慣れない事があるだろうが、みんな仲良くしてやって~」 「「はーい」」 …僕がいた学校とは明らかに違いすぎる。 もっとピリピリしてクラスメートの事なんて気にしない。 むしろライバルを蹴落とそうと虎視眈々だった。 それなのにこの新しい学校のこの新しいクラスはその空気を全く感じさせない。 仮にも特進クラスでありながら競争心というものが無いのはどうなのか。 「あ、あの席に座ってくれ。右から3列目の一番後ろな」 「はい」 赤坂先生が示した席へ行く。そのとき隣の女の子と目が合った。 女の子は少し微笑んだので僕も曖昧に笑い返しておいた。 「んじゃ、HRの続きをしよう」 僕の新しい生活はこんな感じで始まった。
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