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前方に人影が見える。
それは4人の男だった。
その4人はこちらに向かっているらしく、総は鉢合わせを避けられそうにないと覚悟した。
コソコソするつもりはない。
自分はこの町を荒らす不届きものを斬っただけだ。
文句など言われる筋合いはない。
ただし、向かってくる4人が総が殺した浪士の仲間じゃなければ、の話だが。
「そこの男、何をやっているんですか?」
ニコニコとした笑顔でありながら、裏がありそうな顔をしている、細身の男。
4人はすでに顔がしっかりと見えるほど近くに来ていた。
「不逞浪士を斬っただけだ。
今から奉行所に行くんだよ」
「奉行所だぁ?
するってぇと最近不逞浪士を奉行所に差し出す男ってのはお前のことか」
がっしりとした体つきの男の言葉に、そんな風に言われていたのかと苦笑した。
「なんか、あなた見たことあるんですよね」
最初に話しかけてきた細身の男がむぅ…と考え込むが総は無視して、早くこの場を去ろうとする。
「では、もういいですかね?
奉行所に行くので。」
スッと4人を横を通り抜け、歩き出す。
「あ、思い出しました。」
「え、総司知り合いなの?」
総司と呼ばれたニコニコ顔の男はゆっくりと総を振り返る。
総もその声にゆっくりと振り返った。
「えぇ、こないだ町で見たんですよ。
甘味処で、ね。」
くすくすと笑い、こちらを窺うようにして言葉を紡ぐ様を見て、最近自分に付きまとっていたのはコイツだと総は確信する。
「……最近俺を付回してんの、アンタか」
「私、壬生浪士組の沖田総司といいます。」
付回す、と聞いた沖田の連れは本当か?といった様子で
沖田と総を交互に見比べた。
「総司、そんな趣味だったわけ?」
今まで黙っていた小柄な男がからかうようにして口をひらくと
もう1人黙っていた背丈の高い男もそれに便乗してニヤニヤと笑う。
「総司は男に走ったのかぁ」
がっしりとした体つきの男まで納得する。
「……藤堂さん、原田さん、永倉さん?
貴方たち、地獄が見たいんですか?」
氷点下の笑みで3人を見ると
震え上がりながら、冗談ですと口々に言った。
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