壬生浪士組へ

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次の日の目覚めは最高だった。そう。目覚めは。 起きた後に、壬生浪士組の屯所に行かなければならないことを思い出してすぐさま気分は害された。 しかし、どうしようもないことだ。 総は腹を決めて、家を出ようとした、そのとき。 今朝は朝飯時もずっと黙っていた珠が総の袂を引っ張った。 珠がこういった仕草をするときは、あんまり良くないことが起きる。 総の経験上間違いない。 壬生浪士組屯所で一悶着ありそうだ、と頭を悩ませつつ、珠の頭をなでて、家を出た。 「総兄……浅黄色に注意」 そんな珠の声はもちろん、聞こえるはずがなかったのである。 町を歩いていると総は何かと町人に話しかけられる。 と、言うのも。 今は仕事用の変装をしているからだ。 総のことは思ったより知れ渡っているらしく、感謝のつもりなのか、道沿いの甘味処は団子や饅頭を包んでくれたり、小物をくれたりと 両手がもので一杯になってしまうほど、ものをもらっていた。 これはこれで、総は嬉しい限りだった。 町を抜け、少し外れのほうに壬生という地区はある。 壬生寺を見つけると、きょろきょろと見回し、屯所を探す。 すると門番らしき男が見え、そこまでいく。 門番は総を怪訝そうに見たが何も言わない。 総は両手に荷物を山ほど持っていて、壬生浪士組を尋ねるような感じには見えないからだ。 「沖田、いる?」 その偉そうな総の態度が気にくわなかったのか、門番は無視を決め込んだ。 青筋が浮く。 門番と話すのが面倒になった総は足で門番に一撃いれて、意識を落とすと中にさかさかと入っていった。 面倒事は嫌いだが、面倒事をおこすのが総であった。
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