プロローグ

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10年前くらいから私は人に追われる立場となった。 夢でよく見ることは、10年前のあの日のことや人に追われる夢。 それと、総兄がいない日の夢。 総兄がいない日の夢は起きた後、夢だったのか、現実だったのかよくわからなくなる。 「待て!!!」 夜闇を駆ける複数の足音と声。 少女と思われる軽い足音と、 男達と思われる複数の足音。 男たちは皆、袴を着て腰に脇差のみをさして前を走るまだ年端も行かない少女を追う。 少女が角を曲がったのを闇の中だがかろうじて見えた。 それを追って男たちも曲がる。 が、そこに少女の姿はない。 1本道で脇道などない。 男達はどこに消えたのか。と首を捻るばかりだった。 そのころ、追われていた少女、珠(タマ)は町のはずれのあばら屋にいた。 男達を撒いたのである。 いつものようにあばら屋の中に入るも、誰もいない。 「総兄……。いない……。」 総兄(ソウ)とは珠の兄。 兄とは言っても義理なのだが。 珠は総がいない寂しさを紛らわすかの如く 膝を抱え、部屋の隅で双眸を閉じたのだった。 これは夢?
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