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珠は口を開くことができず、キョロキョロと総の姿を探すが一向に見つからない
「じゃあ行こうか」
有無を言わせずその浪士は珠の腕を引いていく。
浪士たちは止まらない、総は来ないで万事休すな珠は自分で何とかするしかない。
珠は何もできない女子ではない。
総から護身術を習っている。
女子は力が弱いが珠の場合、鬼の怪力がそれを手助けするため問題ない。
珠を引っ張る浪士の腕を捻り上げて壁に押し付けた。
幸い壁近くを歩いていたためうまく壁に寄せることができた。
「このアマ!!」
浪士2人が刀を抜いて私に押さえつけられている浪士を助けようと切りかかろうとするが、怖くなかった。
「やっちまえ!!」
総兄が見えたから。
「俺の女に何してんの?」
ドスをきかせた声で切りかかってきた浪士2人を総は峰打ちですばやく意識を落とし、珠が抑えていた浪士も鳩尾に一撃を入れて意識を落とした。
総は黙って珠を引き寄せて甘味処に戻り、お代を払うとあたりを警戒しつつも足早に家へと歩いた。
そんな2人を見ている2人組がいたのを総たちは知らない。
「ねぇ、見てました?今の」
好奇心でいっぱい、といった表情に隣にいた男は呆れながらも冷静に答える
「あぁ、男のほうも相当だが、女の方もできるな、恐怖は感じられなかった。」
「私はあの男の人とやりあいたいですねー。
さっきすれ違ったんですけど、彼、血の匂いがしたんです。」
ふふ、と女顔負けの笑顔で笑うこの男は、壬生浪士組の沖田総司である。
「あやつらが敵ならばまた会うこともあるだろう。」
無愛想で冷静なこの男は斉藤一。
この2人に見られていたことが、苦労することになるとは総も、もちろん珠も予想していなかった。
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