きっかけは

7/7
前へ
/45ページ
次へ
にぎやかな街中を抜け、人気がなくなった道を黙って歩く。 珠は申し訳なくおもって謝ろうと口を開こうとしたが、 それを察したかのように総が先に口を開いた。。 「珠のせいじゃねえ、だから謝るな。」 ポンポンと頭をなでて、総は優しく笑った。 なおも落ち込む珠に心中で苦笑する。 「また、甘味食べに行くぞ、 今度は饅頭か?」 「ううん、羊羹がいいな。」 やっと頬をゆるめた珠に総も笑った。 ここで珠はフト思う。 総兄はどこで、どうやって お金を稼いでいるのだろう? 珠は何もしらない。 総は昼間に出かけることもあれば、珠が寝た後の深夜に出かけることもある。 知っているのはそれだけ。 10年前から2人で生活しているが、食べ物や生活に困ったのも最初だけだった。 けれど、総が話さないということは、自分は知らなくても良いことなんだ、と自己完結した。 珠が考えているうちに家の付近まで来ていたらしい。 家が見える。 珠は総と繋いでいる手にぎゅっと力を入れて握ると微笑んだ。 しあわせ、だ。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

162人が本棚に入れています
本棚に追加