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にぎやかな街中を抜け、人気がなくなった道を黙って歩く。
珠は申し訳なくおもって謝ろうと口を開こうとしたが、
それを察したかのように総が先に口を開いた。。
「珠のせいじゃねえ、だから謝るな。」
ポンポンと頭をなでて、総は優しく笑った。
なおも落ち込む珠に心中で苦笑する。
「また、甘味食べに行くぞ、
今度は饅頭か?」
「ううん、羊羹がいいな。」
やっと頬をゆるめた珠に総も笑った。
ここで珠はフト思う。
総兄はどこで、どうやって
お金を稼いでいるのだろう?
珠は何もしらない。
総は昼間に出かけることもあれば、珠が寝た後の深夜に出かけることもある。
知っているのはそれだけ。
10年前から2人で生活しているが、食べ物や生活に困ったのも最初だけだった。
けれど、総が話さないということは、自分は知らなくても良いことなんだ、と自己完結した。
珠が考えているうちに家の付近まで来ていたらしい。
家が見える。
珠は総と繋いでいる手にぎゅっと力を入れて握ると微笑んだ。
しあわせ、だ。
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