幼い記憶

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「みゃーこ」  お姉ちゃんは今も私のことをこう呼ぶ。お姉ちゃんは私にいつも「ウジウジすんな」ってきつく言うけど、私の事を猫っかわいがりするから、猫みたいなこの呼び名が私は昔から好きだった。 「みゃーこ、泣くな!」  え? 幼いながらに理不尽だと思った。だってさっきまで泣いていたのはお姉ちゃんなのだから。  べそべそ泣いた顔でお姉ちゃんの方を見た。 「みゃーこ。あたしたちは、ママみたいになっちゃだめだ。自立した働く女の人になろう」 「じりつってなあに?」 「一人でも生きてく力をつけるってことだよ」  私はとっても悲しくてまた涙が浮かんできた。 「それってお姉ちゃんともいっしょにいられないの?」  お姉ちゃんはさっきまで泣いていたとは思えない笑顔でこう答えた。 「そうじゃない。私達はいつだって一緒だ。でも一人でも生きてく力をつけてくんだ」
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