第一章

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「あ、お父様つい本に夢中になってしまって……。今何時ですか?」 「全く、いつも時間を気にするように言っておろう。今は……7時50分を回った所だ」 それを聞いた途端、彼女の顔が盛大に引きつった。 「ええっっ!?遅刻する!父様!行って参ります!!」 脱兎の如く駆け出した娘を見送り、壱影は溜め息をつく。   図ったかの様に風が吹き、5月の朝日を浴びた若々しい木葉が、さやさやと音をたてた。
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