序章

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「公主をどこへ隠した?」 臆する事なく自分を睨み付ける正妃に、剣を突き付けながら、男は辺りを窺う。 ふと、まだごく淡く光が残っている一角に目を止めた。 「……術を使ってどこかに送ったな?どこへやった?今すぐ吐け!さもないとこの場でこの男の後を追う事になるぞ!!」 首謀者はそう怒鳴るが正妃は何も言わない。 寧ろ心とは裏腹にその美しい顔に笑みさえ浮かべる。 「普通の女なら卒倒するか狂乱しようものを……」 静謐な笑みはこちらをぞっとさせる。 「(このまま殺してもこの女の思う壺。それに女とは言え魔術も中々と聞く)……捕らえろ」 その言葉を合図に兵士達が動く。 縄を掛けられた彼女は願う。 (この地の未来を貴女に……) それは古の国の長い長い喪失の始まりでもあった。
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