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昭和十八年。
隣町に住む二歳年上の殿村純一とお見合いをしたのは、政子が十七歳になったばかりの正月を過ぎた頃だった。
お見合いと言っても嫁方の家でこじんまりと執り行なわれるもので、そんなに煌びやかな事ではないが、一応正装をして座敷で行うという形が一般だった。
今の時代は戦地に狩り出される若者が多く、その親達が挙って見合いを勧めていた。
何故ならそれは、いざと言うときの忘れ形見を残す手段だったからだ。
純一の父親は三年前既に戦死している。
将校だった純一の父親は全戦に行く事はなかったが、運悪く敵の襲撃を受けて亡くなってしまった。
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