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悲しんだ純一の母親、栄の心中は、いつかは必ず戦地へおもむく定めの息子の命を、黙って差し出す事を懸念していたであろう。
生きて帰る保証がない戦争ならばせめて、といういずれの親も考え、願う事だからだ。
そうして、当然のように執り行われた見合いの日、真っ直ぐに純一を見る事が出来ないまま、政子は俯いていた。
「こちらが渡部政子ちゃん、こちらが殿村純一さん」
と、仲介役の叔母が、向かい合って座った二人の緊張を交互に見ながら紹介していく。
今の時代、お見合いをした時点で結婚は決まったも同然で、二人は二週間後には当たり前のように夫婦になる。
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