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その直後。
咲妃都が御簾を跳ね上げて出てきた。
扇で顔を隠すでも無く、平然とそこに立ち、そして静かに目の前に座した。
まっすぐに見つめられる。
「これから司殿にはわたくしの守りをして頂くようになっております。
どうか、無理をなさらぬように」
咲妃都はにっこりと笑みながら、私の手を取りそう告げた。
「はい」
私は咲妃都の目をしっかりと見ながら、そう返した。
二条家の当主であり、咲妃都の父である康聡(やすあき)様がおいでになったのは、ちょうどこの時だった。
「咲妃都が姿を見せるとは…」
と、ひどく驚いた様子で言った。
それから、
「娘を宜しく頼むよ」
と言われ、康聡様達に深く一礼をして二条家を後にした。
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