Ⅰ 星の海 天使の声

4/6
前へ
/6ページ
次へ
「ソラリネート」 第ニ章 流れ星の日  その日、天体観測で、ぼくらはスピノタ惑星の輪の内側が最大に接近し、星が零れ落ちてくることがわかった。  流れ星の日だ。  「ライラ、ユリノールに乗って、でかけようよ。」  ぼくが云うと、ライラは無邪気に笑って  「早く行こうよ、兄さん。アタシ、星の海を見たいの。」  ぼくの手をとり、急ぎ扉を後にした。  ぼくらは笑いながら飛び出したが、いつものようにユリノールは、自由な散歩に出てしまっているらしい。ユリノールを探しがてら、二人ははしゃぎ、薔薇の園や、わたげの原を走り回った。  するとひょっこり、丈高いミントと苺の野原から、大きな体のユリノールの背中が現れた。風はほのかに、青く澄んだミントの葉の香りと、甘酸っぱい、野生の苺の匂いを含んでいる。  「こんな処に居たのか、ユリノール。さぁ、星を集めに行くよ。」  ユリノールは鼻先も口も、苺の紅(あか)い色をいっぱいにつけたまま、一声嘶いた。この気の良い虹色象は、元気のある時はたいていミントと苺の野原にいるのだが、逆に淋しがっている時は、ラベンダー畑にうずもれて座っていたりする。その習性からすると、今日のユリノールはご機嫌らしい。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加