Ⅰ 星の海 天使の声

6/6
前へ
/6ページ
次へ
ふいに、ぼくは胸をドキンとさせた。ライラはあまりに無邪気で、時々ぼくの胸をつねるほどに苦しめることがあった。何気ない一言、それがぼくに、重くのしかかる。  そのことに、ライラは気付かない。  「えっとぉ、ぼくは…。」  思わず口ごもり、  「ライラは、何を考えるんだい?」  答えをはぐらかすために、ライラに尋ねた。  すると、ライラもゆっくりと母星をみつめ、しばらく瞬きもせずに、  「お・母さん――(マ・ザー)。」  云い慣れない発音をしてから、にっこり笑った。  ぼくはその笑顔に又、云い知れぬ戸惑いと虚しさを感じていた。  「だって、小人族や妖精人がお話してくれるでしょ、お母さん(マ・ザー)のこと。アタシ、とっても大好きなのよ。あったかくて、優しくて、……だからユリノタ惑星を見ると、ことに夕暮れ時には、思うの。きっと、アタシのお・母さんも、あんなに大きくて、そしてそして……温かいんだろうな、……って。」  ユリノールの上で、二人はしばらく黙っていた。その間中も、虹色象は、背中をきらめくオパール色に輝かせて、ふだんより優しく鼻歌を歌っていた。  「そう……だね。」  ようやくぼくが返事をすると、ライラは安心しきってあくびを一つした。image=245960995.jpg
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加