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ふいに、ぼくは胸をドキンとさせた。ライラはあまりに無邪気で、時々ぼくの胸をつねるほどに苦しめることがあった。何気ない一言、それがぼくに、重くのしかかる。
そのことに、ライラは気付かない。
「えっとぉ、ぼくは…。」
思わず口ごもり、
「ライラは、何を考えるんだい?」
答えをはぐらかすために、ライラに尋ねた。
すると、ライラもゆっくりと母星をみつめ、しばらく瞬きもせずに、
「お・母さん――(マ・ザー)。」
云い慣れない発音をしてから、にっこり笑った。
ぼくはその笑顔に又、云い知れぬ戸惑いと虚しさを感じていた。
「だって、小人族や妖精人がお話してくれるでしょ、お母さん(マ・ザー)のこと。アタシ、とっても大好きなのよ。あったかくて、優しくて、……だからユリノタ惑星を見ると、ことに夕暮れ時には、思うの。きっと、アタシのお・母さんも、あんなに大きくて、そしてそして……温かいんだろうな、……って。」
ユリノールの上で、二人はしばらく黙っていた。その間中も、虹色象は、背中をきらめくオパール色に輝かせて、ふだんより優しく鼻歌を歌っていた。
「そう……だね。」
ようやくぼくが返事をすると、ライラは安心しきってあくびを一つした。
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