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歩き始めてから二人は、些細なことから学校生活の話まで色々な会話を楽しんでいた。第三者からみたら、手を繋いだらカップル、と言われても文句が言えないほど会話という誰にでもできることで子供みたいに楽しんでいたのだ。だが、龍一は心の奥で、
(唯と喋るのは楽しいな。でも、楽しいはずなのに何か引っ掛かるんだよな。楽しいよりも凄く楽しいんだけど、楽しいよりもすごく重いんだよなぁ)
「・・・君、龍一君。聞いてる」
龍一は考え過ぎて、唯の話しを聞いてなかった。
「もぉ。龍一君たらさっきから浮かない顔だよ。もっと笑顔になって」
と唯に言われ、
「ごめんごめん。もう大丈夫だよ」
と笑顔で言い返した。
「そっかー。なら良かった」
また、唯は満面の笑みを溢した。今の唯の笑みならどんな人でも微笑み返すだろう。
「神崎君の笑顔は宝石より輝いているね」
と唯がいってきた、すかさず龍一は、
「いやいやいや、そんなことはないよ」
龍一は知らず知らずに顔が林檎に変わっていた。単純に嬉しかったらしい。
「そこまで否定しなくてもいいじゃん。私は本当にそう思ってるんだから」
「ご、ごめん」
と素直に謝る龍一。この時龍一はすごく心拍数が上がっていた。
「ふふっ、神崎君って素直だよね。私、神崎君の・・・素直なところ・・・好きだよ」
と唯が笑顔で言った。でも唯の顔は再び真っ赤な林檎になった。
「そんな・・・そんなの嘘だ・・・」
と言い、龍一は走りだしてしまった。その目には涙が浮かんでいた。龍一は、本当は「好き」と言われ嬉しかったのだ。でも、龍一は初めての出来事にパニック状態になってしまい、走りだしたのだ。
「ま、待って神崎・・・君・・・」
と唯は言ったが、龍一には聞こえていなかった。いや、聞こえていたとしても振り返りはしなかっただろう。
(俺は、唯と喋ると楽しくてドキドキする・・・何なんだよこの気持ちはー!!!)
龍一はわかっていなかったが、龍一は初めて恋をしたのだった。
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