プロローグ

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出会いはたくさんあった。 老若男女、様々な人と関わる機会があった。 しかし、そのたびに最後は別れを経験させられた。 父さんの仕事の都合だった。 出会い、それから人間関係を築き上げても、すぐに別れ、悲しい気持ちで満たされる。 いつしか無意識に他人に対して壁を作るようになった頃、父さんが死んだ。 交通事故らしかったが、不思議と涙は出なかった。「別れ」というものに慣れていたから。もう二度と会えない「別れ」だというのに……。 今思えば、冷めた奴だったと軽く自己嫌悪に陥る。 仕事の都合での別れ、つまり引っ越しを繰り返し、色んな街を転々とするわけで、出会ってはまた別れる。そんな価値のない毎日を繰り返していた。が、父さんが死んだことによって今いる街に落ち着いた。 それなりに友達もできて、それなりに楽しい毎日を過ごし、そして僕は今日高校生になる。  桜が咲き誇る、出会いと別れの季節。 全てが新鮮に感じるくらい緊張してるけど、同時にワクワクしている。 それは新しい人との出会い。 もう別れることはない。 いつまでも知り合いでいられるような関係を他人と過ごしていきたい。 今日からの僕の生活は、空一杯に広がるこの青空のように清々しく、輝いているように思えた。   
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