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∬ACG第48支部∬
凛斗が目を覚ますと辺り一面、真っ暗だった。光っているのはわけの分からない機器が放つ怪しげなモニターだけである。
凛斗は突然のことに頭が真っ白になり、いつも以上に事態が把握出来ない。動こうとしたが手足は縛られ、猿轡をつけられていた。
「ん、ん~、んんん!」
凛斗は部屋の中に誰かがいることを期待して声を発した。すると突然部屋に照明が燈され、凛斗は突然のことに目をつぶってしまう。
目が慣れたころに視線を上げると回転式の椅子に座り、反対側を向いてキーボードを物凄い速度で打っている人が見えた。
凛斗がもう一度力いっぱい叫ぶとキーボードを打つ手が止まった、と同時に椅子がこちらを向く。
「起きたか、凛斗。先程は手荒な真似をしてすまなかった。しかし凛斗を速やかに連れてくるにはこうするしかなかったのだ」
モニターの光で影になって顔は分からなかったが、どこかで聞いたことがあるような気がした。
「おい、返事ぐらいしたらどうなんだ? せっかく私が手を止めて話をしているというのに……」
凛斗は本気で声にならない声で返事をした。するとようやく猿轡の存在に気付いたのか、近くにいた研究者のような男が凛斗の口を解放した。
「ん? お前は……雫なのか?」
目が慣れてはっきり見えるようになると椅子に座る雫の姿が確認できた。
「そうだ、体育館裏で君を眠らせたのも郵便受けに封筒を入れたのも私だ」
雫は静かに立ち上がり凛斗に近づいた。
「拘束してすまない、君が暴れたり舌を噛んだりしないようにするためには必要だった、だがもう必要ないようだな」
雫が命令すると凛斗の枷はあっさりと外された。凛斗は体を伸ばし、筋肉をほぐす。
「ついてきてくれ」
雫はそれだけ言うとその部屋を後にする。凛斗はとりあえず雫を追いかけたが話しかけられない。
すれ違う人全てが例外なく雫に頭を下げるのである。
不意に雫の足が止まった。目の前にある扉に目をやると『第3接待室』と書いてある。
雫が扉の横にある認証パネルに手を当てると扉が開いた。
「さぁ、入ってくれ」
雫に言われるまま凛斗は中に入った。
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