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一一4.14
凛斗はふと目を覚ました。枕もとにある目覚まし時計を見ると5時19分を指している。
その瞬間、時計の長針が動いた、と同時に凛斗の部屋には目覚ましの音が反響する。
こういうことは今までによくあった。だから最近は目覚ましをかけずに寝ていたのだが、今日は特別ということもあって目覚ましをかけていた。
凛斗は少々肌寒さを感じていたが、意を決して布団から飛び出し、文字通りパッと脱いで、パッと着替えた。
何を持って行くべきか迷っていると、時計の長針がⅨを指していることに気付いた。凛斗はとりあえずエチケット用品と物心ついた時から肌身離さず持っていたお守りを手にとり、上着のポケットに入れて財布に手をかけたがそこで静止した。
(誰か分かるようなものが入ってるのは持って行かないほうがいいよな)
凛斗はそう考え直して財布からカード類を全て抜き出し、手に持ったまま部屋を出た。
凛斗がなんだかんだしていると時計は6時の5分前を指そうとしていた。
凛斗は音をたてないように全力疾走で階段を降りてキッチンに向かう。邪魔なので財布は食卓の上に置き、食べ物を探したが見当たらない。
「くそっ、今日は朝飯抜きかよ……」
凛斗は悲しげに呟くと時計に目をやる。時計の針はもうすぐ6時を指そうとしていた。凛斗は仕方なく家を出た。財布は置きっぱなしだ。
電波ソーラー20気圧防水、誤差は年に0.0028秒という高校の合格祝いにもらった高価な腕時計を見ていると5時59分50秒に曲がってくるワンボックスカーに気付いた。
そしてその10秒後、凛斗は車上の人となる。
中には運転手とカジュアルな服装で読書をしている雫がいた。
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