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∬教室1一4∬
天祇劫高校は30階建ての高層ビルの11~30階にある。最上階は職員室や校長室などが占め、その下は運動場、さらに下は体育館、残りの階を各学科で区切っている。
普通科は一番下の11階にあり、生徒はエレベーター使用禁止なので体育の授業などは始まる前からみんなヘトヘトになる。
「よ、り~んちゃん! 同じクラスだね~、今年もよろしく」
階段を降りきり、ようやく教室に到着した凛斗に突然後ろから飛びついてきたのは中学2年からの付き合いの『館鞍 繚司<タテクラ リョウジ>』。いつも誰かに絡んでいる人当たりのいい活発な奴だ。凛斗とは気が置けない仲までではないが、それなりに仲が良い。
「あぁ繚司か、お前と同じクラスなんてついてないよ、俺は……」
「な~に言ってんの、りんちゃん。俺達の仲じゃないか」
繚司はいつも凛斗を[ちゃん]付けする。しかし何度言っても直らなかったので凛斗は諦めていた。
さすがに新しいクラスで[ちゃん]付けされるのだけは何をおいても防がなくてはいけない。もう一度繚司に言ってみようと思ったときだった。
「は~い、じゃあ席はどこでもいいからとりあえず座って~」
突如現れた女性は生徒を席に着かせた。眼鏡をかけ、少々小柄だがスタイルもよく優しそうな人だ。見るからに新人教師であるこの人は、実は若くして色々な賞を受賞しているのだが、そのような雰囲気は微塵も感じられない。
「え~、私がこのクラスの担任になった『瀬桐 絢華』、読み方は『せどう あやか』です。趣味は料理やお菓子作りで、好きな食べ物はケーキです。部活動の担当はしてないんだけど好きなスポーツはサッカーです。と言っても見るほう専門なんだけどね。
自己紹介はこのくらいかな。じゃあ窓側の1番後ろから順番にいってみよ~」
ぼんやりと先生の話を聞いていた生徒たちは我に返って窓側の席を振り返る。
みんなと一緒に凛斗も振り向いてみたが後ろには誰もいない。そして凛斗の左側は窓だった。
先生の言ったのは凛斗のことだったのだ。
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