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☆
――4.11
凛斗は夢を見た。
暗い部屋の中である男がじっと見つめてくる。
青い世界に閉じ込められ、体を動かすことができない。
まるで全身を拘束されたかのような感覚だ。
静寂に支配され、体を動かせないが故に自然と視覚のみに集中する。
男がキーボードに向かって指を動かすごとに体が熱く感じられた。
ジリリリリ……
目覚ましの音が鳴る。
凛斗は目覚ましをとめるとベッドから立ち上がった。
凛斗は毎朝6時に起きてテレビを見る。いつもはすぐにテレビの前に座るのだが、今日は階段を降りていると郵便が届いた音がした。仕方なしに凛斗は郵便受けに向かった。
郵便受けを覗き込むと朝刊の上に薄いピンクの封筒が乗っていた。表には『彪臥 凛斗様』と書いてある。
凛斗は中に入って封筒を開けた。そこにはただ
今日の放課後、体育館裏で待っています。
とだけ綺麗な字で書いてあった。
なんだ、これは……
愛の告白か?
全く心あたりのない凛斗はそれを鞄に放り込みテレビを見ることにした。
「本日は晴れから曇りへと…「今年の桜は…「今年は花粉の飛びが遅く……」
凛斗はいつものように次々とチャンネルを切り替え、気になる番組を探す。するとふと凛斗の手が止まった。
「本日、日米英の三国で共同開発されていた完全自立型二足歩行ロボット『アーク』の公開起動が行われることになりました。来年度より本格的に救援活動に導入するため、稼働実験を兼ねて安全性を示すことが目的のようです。
この『アーク』は救助やテロ対策に活用するために開発されました。センサー類は赤外線、熱探知、超音波など多彩に搭載し、万が一戦闘になったとしても戦えるように銃火器類も搭載できるようになっています。今回稼働実験が行われるのは1体だけですが、……」
凛斗はリモコンを置くと深くため息をついた。
凛斗は今何不自由なく平和に暮らしている。だが世の中には『アーク』のようなものを使う必要がある地域が存在すると考えるとため息が出たのだ。
そうしていると階段を降りてくる音が聞こえた。時計に目をやると6時30分を指している。いつも伯母が降りてくる時間だ。
凛斗がテレビに目をやると、もう次のニュースに変わっていた。
凛斗は昨日と同じ時間に家を出て学校に向かった。
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